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ウェルビーイング対談 vol.2

『おせっかい』を正しく使われていた子どもの頃。
「常に誰かが心配してくれている」という環境は親としても楽です。

  • 澤田

    荒さんが普段どの様なことをされているのか、お伺いしてもよろしいでしょうか?

    私は「HITOTOWA(ヒトトワ)」という会社を経営しておりまして、主にネイバーフッドデザイン事業を取り組んでいます。ネイバーフットデザインを日本語で訳すと「ご近所付き合いをデザインする」という意味で、昨今の都市生活だとあまりご近所との繋がりを作れないと思うんです。それでも、ご近所付き合いがあることによって例えば子育てがしやすいとか、災害時に助け合いやすいとか、沢山の良いこともあるので、そういった繋がりを作る事業を展開しています。

  • 荒さん
須藤

ネイバーフッドデザインは、あまり聞き馴染みのないワードですけど、どこが発祥なのでしょうか?

海外ではネイバーフットデザインを空間や外交などを整備するハード面の意味合いで使われることが多いのですが、私たちが日本に持ち込んだ時は『ネイバーフッドコミュニティ=人々の繋がりのソフト面』が重要だと感じていたので「人々の繋がりを作る」といった意味で使用しています。コミュニティと一言で表しても様々な意味があり、例えば職場の方とのコミュニティや家族のコミュニティ、趣味の方々もコミュニティだったりするので、その一つひとつが全部大事なのですが、私たちがいちばん現在の都市生活に足りないなと思っているのは、近くに住んでいる人たちとの繋がりだと考えています。

普通に暮らしていると、やはり近所付き合いというのはなかなか無いですよね。私の子どもの頃はもう少し繋がりがありました。私は団地育ちなんですが、近所の子どもたちと一緒に草野球とかやって例えば日が暮れるまで遊んでいると、近所のおばさまが「もう帰りなさい」って言ってくれて。「○○さんの子でしょ、帰りなさい」って言ってくれたりして、地域としてやっぱり守られているという印象が確かにありましたね。

  • 須藤
  • 須藤

    おせっかいなおじいさんに、いつも怒られてました(笑)。

    『おせっかい』というのが正しく使われていると、やはり子どもを守ることにもなるし、教育にもなるし、「常に誰かが心配してくれている」という環境があるのは親としても楽ですよね。

    須藤

    個人的には『おせっかい』ってそこまで嫌な言葉じゃないと感じています。例えば、職場の中で「上司、部下、同僚がおせっかいで…」というのはまだまだあるかもしれませんが、プライベートな空間でのおせっかいは、することもされることも最近ではあまりないなと思っていて、なんか心地いいお互いの距離感というのがありますよね。

    『おせっかい』というのは、ベースとして地域の緩やかなつながりや信頼関係がないと「なんか裏があるんじゃないかな?」や「騙されているんじゃないかな?」といったように、ちょっと怖いところはありますからね。

ご近所さんを名前で呼べること。
災害時では、実はそれがとても大切です。

  • 私たちが着目しているのは、近くに住んでいる人たちのつながりがあるからこそ、豊かな生活が送れるという部分です。今までの都市開発は、日本人のライフスタイルをちょっと軽視してきたところがあるので、その様な「助け合える関係性」をつくる仕事をさせてもらっています。

    澤田

    災害時についてですが、やはり普段からの信頼関係やお付き合いがないと非常事態になった際に手を取り合うというのは難しかったりするのでしょうか?

    そうですね。とっさに助け合うといった人間の善良な部分はあると思いますが、例えば、声を掛ける時に「名前で呼べる」というのがすごく大事かなと思っていて。地震の時、家や部屋に閉じ込められてしまうことってあるんです。その時に隣人が心配で来た際、名前が分からなかったら声掛けが出来ないじゃないですか。声掛けて反応があって「ここに人がいるぞ、助けよう」みたいな動きになると思うんですけど、顔と名前が分かるということがとても重要だと考えています。

  • 澤田さん

実はそれって意外と難しくて、表札出してない・出さないという話もあれば、なんとなく最近の地域のコミュニケーションって○○さんのママや○○さんの息子といった呼び方が多く、名前があまり分からない場合があるんです。災害時もそうですし、人間付き合いとしても、個人として扱われていないというか、ただそこにいる人という感じになってしまう付き合い方を僕らは日常的にしていて、社会的な孤立のきっかけになっていると考えています。やはり一人ひとりの人生があるので、僕らはネイバーフッドデザインを通じて、なるべくバイネームで呼び合い、その人のことを見るように意識しています。一人ひとりを見ていくと、その人が集団でやりたいこととか見えてくるんですよね。それを作ってサポートしていくことに取り組んでいます。

『本人主体』ではないことが日本のコミュニティの課題だと考えています。

澤田

具体的な取り組みとして、他にはどのようなことをされているのでしょうか?

僕たちはデベロッパーさんと一緒に事業を行うことが多いです。新しくできるマンションや団地再生などのタイミングで、防災・減災が果たせるよう地域の方々向けに防災のワークショップをやらせてもらったりしています。また、ワークショップなどの勉強で終わらずに、地域の方々が話し合いながら防災・減災、自分たちで出来るような「防災委員会」や「防災サークル」など、2〜3年間一緒に考えて一緒に動ける組織を立ち上げて『普段は楽しく、いざという時に助け合えるコミュニティを作りましょう』と、よく話をしています。普段は趣味の話や雑談などが出来る『他愛もない関係性』で良いと思っていて、その中から本当の親友が生まれたりしてくるのが理想的だと考えています。ミッションありきというよりは、どちらかというと「豊かな人間関係が地域にあるといいな」といった想いのもと活動しています。

須藤

私の場合は特にシニアの方が中心ではあるんですけど、人が何人か集まると、似たような思いや趣味、欲求を持っている人が自然とグループとして出来るんですよね。最初のきっかけさえあれば、その後のコミュニティは自然に育っていくという。ただ、その最初のきっかけがなかなか作れないので、HITOTOWAさんのようなお仕事が今必要になっているんだと思います。

本当にそうだと思います。私たちもよく言われます、そのきっかけを作ってくれてありがたいと。なかなか言い出せなかったりしますし、どこに言ったら良いのか分からないというのが根底にはあると思うんです。地域に貢献して生きていきたい、自分の故郷を大事にしたいって思われている方もたくさんいらっしゃるのですが、その方々もどうしたら良いのか分からなかったり、行政的にそういう枠を作ってはいるものの基本的に決められた役割しかないんです。色んな人の得意分野や経験を活かすためにも、自分で選び、選択の余地があるということが、本当の意味での豊かな環境だと考えています。

  • 荒さんと須藤さんの対談
  • 須藤

    多くのコミュニティがそのようにデザインされてしまっているんですよね。住まいとケアの分離みたいな考え方を福祉の業界では表現することがあるんですが、例えば北欧はまず自分の住む場所があって、その先にどういったものを提供しようかっていうのが後からオプションのように追加できるシステムとなっています。一方で日本の場合は、日本のコミュニティ・ケア・デザインの考え方がどうしても『本人主体』になっていないので、そういったものを少しずつ変えたいという思いはあります。しかも福祉業界の中だけで頑張っても、なかなか届かないんですよね。福祉の枠組みの中で「何か言っているな…」といった程度になってしまい別の業界からそういったお話をしていったほうが、もしかしたら世の中に何か届くんじゃないかなと思って、今この様なお仕事をやらせてもらっています。

コミュニティの希薄さが『子育てしづらい環境』に繋がって
引いては、少子化にも少なからず影響があると思います。

澤田

先ほど子育てについてのお話もありましたが、家庭内の子ども福祉での分野でのお仕事というのもされていますよね。

ネイバーフッドデザイン事業を通じて、地域のコミュニティで子育てを助け合うという取り組みと同時に、子どもと家庭の問題に関する研究事業も行っています。子どもが孤立していたり、母親あるいはお父さんの孤立や幼児虐待を解決していく研究などにも取り組んでいます。なぜその様な研究を行っているかというと、地域コミュニティなどの繋がりの中で解決できることはあるんですけど、専門性や問題の本質、知識を持っていないと、逆に傷付けてしまったり、あるいは問題に気付かなかったりするので、私たちは研究と実践の両輪で活動させていただいています。

須藤

現在どんどん子どもたちが少なくなってきているじゃないですか。コミュニティの希薄さというのは『子育てしづらい環境』に繋がっていて、やはり少なからず影響があるんでしょうか?

  • あると思います。マンションのコミュニティづくりなどを手伝わせていただくことが多いんですが、現代は共働き世帯が多く、それは別に悪いことではないのですが、どうしても子どもと一緒に過ごす時間が限られてしまいます。そうすると親も子どもに対して申し訳ない気持ちになるし、子どもも親以外の大人と過ごす時間の方が多くなってしまい親に対して見てほしい事や聞いてほしい事などがたくさんあったりと、お互い思い合っていてもすれ違ってしまいがちになります。コミュニティスペースの運営も行っているんですけど、そこに宿題やりに来る子どもたちが結構いて。共働き世帯の子が多く、家で宿題をしていると寂しくなったり不安になったりしてしまい、コミュニティスペースに来て私たちスタッフに教えてもらいながらやったり。親としてもそういう場にいると安心だったりもしますからね。『みんなで家族』って言うと大袈裟かもしれませんが、なにかその様な関係性での付き合い方を提供しています。

  • 荒さん

とても印象深いエピソードが最近あって、5年前から運営し始めたコミュニティスペースにこの前行ったらたまたま小学校の卒業式の日で、5年前からずっと宿題をしていた女の子が卒業式で、コミュニティスペースにあいさつに来ていて「卒業しました」「ありがとうございます」といったあいさつの中に「高校生になったら、ここでバイトしたい」という言葉があって。これまではネイバーフッドデザインって、どちらかというと面的な取り組みだと思っていたんですが、人付き合いを広げていくことで時間を越えた繋がりも作れるんだなと思って、それはそれで一つの価値だと思いました。この様な成功例をこれからも沢山つくっていきたいと感じました。

荒さんと須藤さんと澤田さんの対談

色んな選択肢の中から、自分が楽しいと思えるものを
どんどん諦めずにチャレンジしてほしい。

澤田

最後になりますが、荒さんが思う「ウェルビーイングな暮らし」とはどんなものでしょうか?

私たちの仕事はコミュニティづくり、ネイバーフッドデザインが主ですけど、やはり一人ひとりが幸せであるということを今日改めて大事だと思いましたし、その人らしい人生というのを自分たちで選択できたり、決断できたりするのは、すごく大事なことだと感じました。僕らはコミュニティづくりをやっているんですが、一方でコミュニティに参加しない自由っていうのもありますし。人間関係のカタチは色々あって然るべきですし、ライフステージによって優先順位が変わったりもするので、今は参加しないけど存在は認め合うといった関係性が重要で、全員が全員、同じ価値観に当て嵌めるのは駄目かなと思っています。価値観が同じである必要はなく、違いを認め合うとか、それぞれがその価値観になっている背景を理解し合うということも重要だと感じました。そして、それが本当の意味での人間関係における『信頼』という意味だと思うので、そういうものが自然につくれるような場やきっかけを私たちが作っていけたらと改めて考えさせていただきました。

須藤

この様なお話を対話形式でさせていただく機会が個人的には多いんですが、意見が違って考え方も違って良いんだけど、ちゃんと話し合ってお互いの意見を確認し合うことで「あなたと私の意見が違うということが、いま分かり合えましたね」ということが大切だと常々心に留めています。その先には、今このテーマについては「あなたと私の考えは違うけれども、別の部分でもっともっと認め合えることがあるよね」と。それが人間関係を作っていくという部分だと思うので、恐れずコミュニケーションを取り合える場があってくれると、もっともっとみんな分かり合えるんだろうと感じしています。

コミュニティの考え方はすごい通じますね。僕らもコミュニティのあるべき姿はもちろん大事なんだけど、やっぱりそこにいる一人ひとりに向き合えるかがコミュニティの本質だと思っています。「ウェルビーイング」という言葉がありながらも、一人ひとりが何に幸せを感じるかは違っていたり、状況が違っていたりする筈なのでそういうところまで向き合っていく、まさにその様な住まいをつくりたいということですよね。

  • 須藤さん
  • 須藤

    そうですね。分かりやすい目標や夢は、各々頑張った結果、そこに到達するなり掴み取るなりしてくれれば良いので、私たちが提供するサービスや幸せというのは『何気ない日常をストレスなく過ごす幸せ』ということに帰結します。生きてく上では、そこまで大事なことじゃないよねって言われれば確かにそうなんです。人はストレスがあっても生きては行けるよねと。でも、私はお風呂に入ったら頭から洗いたいし、お湯には42度のお湯に浸かりたいし。お風呂に入る時、みんなルーチンがたぶん違うと思うんです。それは自分のルーチンでやりたいじゃないですか。日々の日常をストレスなく幸せに暮らせるようなもの、ライフスタイルを提供したいと。その先にある夢や目標を自分の力で掴み取っていくだけの活力が湧くような「頑張ろうっていう気分」になるためには、最低限、心の健康、体の健康が担保されていないと前に向かっていく意欲がどうしても湧かないんですよね。前に向かっていくための意欲を提供するためのライフサービスというものを私たちが提供し、その色んな選択肢の中から自分が楽しいと思えるものをどんどん諦めずにチャレンジして欲しいなと思っています。

profile

  • 須藤 憲綱
  • 須藤 憲綱

    1979年 北海道札幌市生まれ

    大手介護事業者にて、有料老人ホームの施設長、地域連携サービス責任者、社長秘書を歴任。

    地域の医療機関との連携や、全国の介護現場のリスク管理、コンプライアンス是正等に従事。

    その後、介護保険に依存しないビジネスモデルの開発のため、ICTを活用した生産性の向上や新規事業の開発を担当。

    全ての世代が自由に生活できる真のサービスマンションの運営を実現するため、ファーストエボリューション株式会社を設立。

  • 荒
  • 荒

    2010年12月に創業。

    ネイバーフッドデザイン事業を通じて、まちや集合住宅の住民や商店、
    企業、行政といった様々なステークホルダーとともに、人々のつながりを通じて、都市の社会環境問題を解決に取り組む。

    そのまちや住まいに大切なコミュニティとは何か、本質的なものを創造する。

  • 澤田 南
  • 澤田 南

    1988年6月1日岐阜県恵那市生まれ。

    成城大学文芸学部英文学科 卒業後、株式会社ウェザーニュースキャスターを経て、
    BSフジ『ブラマヨ相談室〜ニッポン、どうかしてるぜ!〜』アシスタントや
    テレビ東京『ビジネスレポートS』ナビゲーター、
    BSフジ『橋本マナミのヨルサンポⅡ』MCなど多方面で活躍中。